ご挨拶 -平成29年9月
さて、病院では昨年度の決算がでました。黒字決算で職員一同安堵しております。これは住民の皆さんのご協力と職員の頑張りによるものであり、病院長として感謝申し上げます。日野病院は岡山県北部の一部を含めて鳥取県西南部地区の急性期、回復期、慢性期そして終末期の医療を担っております。厚労省は病院の機能分担を進め、病院減らし、病床削減をしようとしておりますが、過疎地では機能分担すべき病院も近くにはなく、患者の利便性を考えれば高度な医療設備を必要とする疾患以外は一つの病院で完結するのが理想といえます。医師、看護師、薬剤師などスタッフ不足という問題を抱えていますが、なんとか住民の皆さんに不足のない医療を提供するために今後も努力していきたいと思います。
さて、医療の質を担保することは病院にとって大変重要な問題です。過疎地の病院であるからといって、医療の質を落とすことはできません。小規模な病院はそれなりの工夫をして診療のレベルを落とさないように努力しています。その例として、最近導入した新たな診断法をご紹介いたします。一つは手のひらに乗るほどの小さいタブレット型超音波装置です(図1)。画質は通常の超音波には及びませんが、心不全、脱水症、胆のう炎、尿閉、胸水、腹水の診断には有用です。特に、病院に受診が困難な在宅診療や老人保健施設において極めて有用です。今後、訪問診察や施設への往診に持参していきたいと考えています。もう一つはMRIを用いた全身のがん診断です。30分程度の検査で頭から足まで全身の検査が一回でできます。特に、一度がんになって治療後経過観察を行っている患者さんで全身への転移がないかを調べるのに有効と考えています。例えば、乳癌の患者さんでは肺や肝臓、骨などに転移していないかを調べるために肺のCT、肝臓のCT、骨シンチグラフィー、場合によっては高額なPETを取らないといけませんでした。それがMRI全身拡散強調画像(DWIBS)ですべて見ることが可能です。まだ、一部の先進的な医療機関でのみ行われているだけですのであまり普及していません。鳥取県でもほとんど行われていません。当院では7月より開始ししており、普及させたいと思っています。今後、さらにMRIの画質が進歩すれば、がん検診も一回のMRIでできるようになると思います。今のように胃カメラを受けて、胸部レントゲン写真を撮って、大腸カメラを受けて、女性ならマンモグラフィー、子宮頚がんの細胞診と多くの検査を受けなければなりません。それが一回のしかも注射もなく寝ているだけで検査が終わります。昔のテレビ番組の宇宙大作戦で棒のようなものをかざすだけで診断できたのと同じことが可能となります。この二つの検査法については今後のせせらぎで随時詳細をお知らせいたします。
暑い夏が終わってから夏バテをおこす患者さんが多くいます。油断しないように、夏の疲れを残さないよう体調に気をつけてください。
平成29年9月