出かける医療・近づく医療
  1. トップ
  2. これまでの院長ご挨拶
  3. これからの地域医療のゆくえ -令和6年5月

これからの地域医療のゆくえ -令和6年5月

 新型やくもが伯備線を走るようになり、最後の国鉄特急形である旧型やくもは6月で消えていきます。ここ数ヶ月多くの撮り鉄が、雪の中を疾走するやくも、満開の桜を背景にしたやくもなどの写真を撮りに賑わっています。新型やくもは車両数が大幅に減っています。沿線の人口が減少し乗客数も減っているためで、新型やくもが投入されても決して手放しで喜んでいられる状況ではありません。医療はもっと厳しい状況が起こっています。日野郡では毎年、人口が2%ずつ減少し、高齢者もほぼ同じ割合で減少していることから、今後高齢化率は55%程度で横ばいになると推定されています。つまり、人口減少の最終段階に入ってきたことを意味します。人口減少には3つの段階があり、第1段階は少子化による若年減少、老年増加、第2段階は若年減少、老年横ばい、第3段階は若年老年ともに減少です。日野郡はすでに第3段階に入って10年以上になります。私が日野病院に赴任した当初から、このような社会環境にある病院をどのように維持発展させるかを模索してきました。人口減少がさらに進めば、今までうまく機能していた方法も変えていかなければなりません。先日、日南病院のあり方委員会の報告書が送られてきました。日南病院の建て替えに向け今後の方針を示すものです。私も委員として参加しておりましたが、報告書の中には病床数の削減、介護型療養病床から医療型への転換、新築に伴う移転など様々な対策を立てています。日野病院も5年、10年先を見据えてさらに対策を練る必要があります。重要なことは今後の日野郡の医療を考えるとき病院単位での対策ではなく、日野郡全体、さらにその周辺地域や連携の必要な米子市の急性期医療機関を含めた対策が必要です。医療機関においてはその危機感は少しずつ醸成されてきており、日野郡3町での連携を進めていますが、一般住民、行政、議会の認識はまだまだ不十分です。今後の日野郡の地域医療を守っていく、発展させるための処方箋はみんなが日々探求していかなければなりません。この難題を皆さんと共に考えていきたいと思っています。
 さて、話を身近な視点に戻しますと、4月から新たな職員を迎えました。外科には久光和則先生、内科は堂坂怜香先生が加わりました。久光先生は消化器外科専門医・指導医であり、国立ガンセンターに3年間勤務された実績もあり、山陰地方の主要病院で活躍されてきました。当院に来られて外科医が2名となり、外科診療がさらに充実するものと期待しています。堂坂先生はまだ4年目の若手の先生です。これから地域医療を学びながら住民の皆さんの健康に貢献していただけるものと思います。看護師は新卒が1名と鳥取看護大学で教職にあったベテランが1名、5月からは中堅クラスがもう1名加わります。
 最後に毎年当院で行っている職員表彰についてです。残念ながら今年は病院長賞は受賞者無しでした。その代わり、局長賞は4名ありました。看護師では足澤亜珠香さん、野村友輪子さん、放射線技師の松田貴寛君、MSWの山口浩一君です。足澤さんは感染認定看護師を取得し、新型コロナ対策を院内だけでなく、周囲の施設への指導にもあたりました。野村さんは便秘エコーを積極的に習得し、これまでに全国学会・研究会も含めて5回もの発表、院内の研修や鳥取大学のTHOCの講師と活躍しました。松田君は放射線技師が少ない中多くの待機や仕事をこなすとともに肝MRIに関するデータを全国学会でも発表しました。山口君はメディカルソーシャルワーカーだけでなく,新たに医事課の仕事にも取り組むとともに、パットみえネットの普及、学会発表にも活躍されました。この方々は今後の日野病院を担う若手、中堅としてさらに活躍されることを期待しています。

令和6年5月