訪問診察の今後の課題 -平成25年5月
4月も下旬となりました。ソメイヨシノの見ごろは終わり、代わって八重桜が満開を迎えています。新しい年度がスタートした日野病院では、多くの新人が働いています。慣れない仕事で大変だと思いますが、1日も早く戦力になって欲しいと願っています。
さて、現在、私は最近の日野病院組合の活動を振り返り、それらの果たしてきた意義や今後の課題などを検討しています。せせらぎ42号では診療所事業について述べさせていただきましたが、今回は訪問診察についてお話したいと思います。
日野病院では長年にわたり在宅療養の柱の1つとして訪問診察に取り組んできました。患者さんのリストが残っている平成15年度以降では、平成24年度までの10年間に250人に対し5260回の訪問診察(往診を含む)を行いました。患者さんの数を経年的に見ると、平成15年~17年が年間30~40人程度であったのに対し、平成18年度以降は60~70人と増加しました。その理由は、平成17年より日野病院の基本的な診療方針が「来ていただく医療」から「出かける医療、近づいていく医療」に変わったためです。
年間の訪問回数については平成19年度には730回に達しました。この増加は担当医師の大きな負担となったため、平成20年度からは患者さん1人あたりの訪問回数を月2回から月1回以下に制限しました。その結果、訪問回数は徐々に減少し、平成24年度には450回程度となりました。
このように日野病院の訪問診察は量的には充実してきました。次の問題は、その質をどのように評価し、高めていくかということです。訪問診察の質を評価するためには、さまざまな指標(クリニカルインディケーター)が考えられますが、在宅死亡率もその1つです。
在宅療養を行っている患者さんやご家族は、落ち着いた状態であれば自ら入院したいと望むことはありません。入院するのは何らかの問題があったからで、それは治療やケアがうまくいっていない証拠です。逆に最後まで自宅で過ごして亡くなるということは、問題がうまく解決できていたことになります。
日野病院の在宅死亡率は最近の6年間の平均では23.4%でした(癌の患者さんでは33.3%、癌以外の患者さんでは20.3%)。この結果は、平成17年に厚生労働省が発表した在宅等死亡率(全死亡に対する自宅、老人ホーム、介護老人保健施設における死亡の割合)の全国平均15.1%よりは上回っていますが、決して満足の行くものではありません。今後も在宅死亡率の上昇を目指して努力しなければなりません。
平成25年4月