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肺炎は患者さんの敵 -平成26年5月

 5月になり田植えの時期となりました。例年より気温が低い気がしますが、苗の育成に影響しないかどうか心配です。それと関係あるのかは分かりませんが、ここに来てエルニーニョ現象が起こる可能性がかなり高くなっているとのことです。この現象が起これば日本は冷夏や長雨になりがちです。今後の気象の動向が気になるところです。
 さて、日野病院は毎月40~50人の患者さんに訪問診察を行っています。私も14~15人の患者さんを担当しています。訪問患者さんは実に多彩です。10年以上にわたって病状に変化がない患者さんがいる一方で、入院を繰り返したり、わずか数回の訪問診察後に亡くなってしまう患者さんがいます。
 何故そのような違いが生じるのかを明らかにするため、最近、私たちは訪問診察開始時の患者さんの背景(年齢、性別、同居人数、主要疾患、肥満度など)と生存期間に関係があるかどうかを検討しました。すると、がん患者さんはそうでない患者さんよりはるかに生存期間が短いという結果が得られました。これはある意味当然の結果でしたので、次にがん患者さんを除いて同じ検討をしました。その結果、高齢、男性、やせの3つが生存期間を短縮させる可能性がある因子として抽出されました。
 この情報は訪問患者さんを診る上で間違いなく有用でした。しかし、文献を調べますと、これらの3つの因子と生存期間との関係は、高齢者や多くの慢性疾患患者さんにおいても見出されていました。すなわち、訪問患者さんに特有という訳ではなかったのです。
 訪問患者さんの経過や生死により直接的に関係する因子は何かということを明らかにするため、私たちは訪問診察の中断理由や患者さんの死亡理由を調査しました。中断理由としては日野病院への再入院が最多でした。そして、再入院の理由としては肺炎が圧倒的に多く、次いで介護者の都合、骨折、慢性心不全増悪、尿路感染症などでした。死亡理由としても肺炎が最も多く、がん、老衰などがそれに続きました。 以上の結果から、訪問患者さんにとって、経過を悪化させたり、さらには死をもたらす因子のうち肺炎が最も重要であることが分かりました。今後、日野病院としては言語聴覚士による訪問リハビリテーションの導入(訪問患者さんの肺炎はほとんど誤嚥が原因です)、肺炎球菌ワクチン接種の徹底(肺炎球菌は誤嚥性肺炎の起炎菌となる場合があります)などに取り組む必要があると感じています。

 

平成26年5月